『私は思想かまたは力によって成功した人々を英雄とは呼ばない。心によって偉大であった人々だけを英雄と呼ぶ。 ロマン・ロラン「ベートーヴェンの生涯』(岩波書店)』
歴史上の英雄は、本当に英雄だったのか? それは、後世に検証されるものだと考えています。
英雄とする考え方には、疑問を感じることがあります。
「一人殺せば悪党で、百万人だと英雄だ。数が殺人を正当化する。」とは、チャールズ・チャップリンが、映画「殺人狂時代」で、チャップリン演じる殺人犯が死刑判決のシーンで叫んだセリフです。
これは、大きな皮肉です。
歴史に見る英雄は、この傾向があり、チャールズ・チャップリンによる社会風刺の一つです。
戦争になれば、自分が殺されるか相手を殺すかなので、当てはまらないという意見もあります。確かに、心情的には理解できます。
でも、戦争の背景を再検証すると、殺し合いをさせるように仕組まれた戦争だらけのようです。
本当に情けなくなります。
銀行家と武器商人、軍需産業が結託して、金儲けをするために、多くの人の血を流してきた歴史は否定できなくなっています。
また、大量殺人を仕向けた独裁者も一人二人ではありません。
近年では、民主化を旗印に、いくつかの国を襲い、金塊や地下資源などの資産を収奪するという悪徳集団もいました。
「心によって偉大であった人々だけを英雄と呼ぶ。」と記された英雄に会ってみたいという気持ちです。
ロマン・ロラン(Romain Rolland, 1866年1月29日 - 1944年12月30日)は、フランスの小説家、評論家。理想主義的ヒューマニズム、平和主義、反ファシズムを掲げて戦争反対を世界に叫び続け、フランスでは評価されなかったが国際的に多くの知友を持った。
ベートーベンをモデルにした大河小説『ジャン・クリストフ』をはじめ、ヒューマニズムの立場にたった作品を発表した。著作に『魅せられたる魂』、戯曲『愛と死との戯れ』、評論『戦いを超えて』などがある。(以下略)
ベートーベンの英雄について(早稲田大学交響楽団)
「ボナパルト交響曲」
この交響曲は、誰もが知る偉人ナポレオンとの関係が深い作品として知られています。
ベートーヴェンは1789年のフランス革命にたいへん熱狂しました。封建社会が終わり市民中心の社会が生まれたように、音楽にも新時代が到来する。そう考えた彼は、「お上の注文通りに曲を作る」従来の職人気質の音楽家ではなく、「自分が作りたいものを作る」フリーランスの芸術家として生きることを志します。
そんな中登場したのがナポレオン・ボナパルト。革命後の動乱を収拾し、「自由」「平等」という革命の理念をヨーロッパ中に拡げようと力を尽くしました。彼の活躍に感銘を受けたベートーヴェンは、「ボナパルト」と題する交響曲を作曲してそれをナポレオンに献呈しようと思い立ったのです。こうした経緯で、1802年の夏に曲を書き始め03年に完成しました。(以下略)