『よい判断力はよい理解から生まれ、よい理解はよい法則から引き出された理論から生まれる。そしてよい法則は、ありとあらゆる科学および芸術の共通の母、よい経験の娘である。 レオナルド・ダ・ヴィンチ『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』(岩波書店)』
ルネサンス期を代表する芸術家であり、「飽くなき探究心」と「尽きることのない独創性」を兼ね備えた人物と表されているのが、このフレーズの作者レオナルド・ダ・ヴィンチです。
その才能は、芸術に留まらず、ヘリコプターや戦車の概念化、太陽エネルギーや計算機の理論、二重船殻構造などまでも、理解していたとされます。
これらは、21世紀の時代において、実用化されています。
でも、その法則や理論について理解している人は少数派だと感じます。
しかし、15世紀の世の中では、かなり変わった人だったことでしょうね。
彼の探究心は、モノゴトの奥に横たわる「よい法則」にたどり着くことだったのでしょう。
彼の感覚と異なる見解については、許容しなかった一面を感じ取っている読者もいます。
これらから想像すると、自分の感性に絶対的な自信が窺えるのです。
それは、一切の妥協がない世界だったのでしょう。
彼が描くリアルな人体は、彼の探究心の積み上げによるものです。
つまり、彼は解剖のチャンスを生かし、人体の中身を知ったことによって、表面上の表現にもリアル感が表現されたとの見解もあります。
レオナルド・ダ・ヴィンチの人生は、パトロンを獲得するチャレンジもあったようです。
大砲や戦車などの基礎技術を高く買ってくれそうな相手を見つけるアプローチをすることもあったようです。
そういう面では、理想と現実の狭間で、葛藤の日々を過ごしていたのかも知れません。
私は、そのような彼に、魅力を感じる一人でもあります。
でも、才能の差は、歴然としていますので、自分でできる範囲に留め、彼の足跡と、その後の技術の変遷の結果得られた恩恵に浴したいと考えています。
イマイチスッキリとしない世の中が、少しでも希望を感じられるように願い、今年の最後の投稿といたします。また、来年もよろしくお願いいたします。
レオナルド・ダ・ヴィンチの手記(岩波書店サイト)
ルネサンスの偉大な芸術家,科学者であったレオナルドの手記.上巻には『人生論』『文学論』『絵画論』を,下巻には『科学論』を収める.そこには人生に対する箴言あり,寓話笑話文学に対する批評あり,「モナ・リザ」の絵を生みだした陰影と遠近法の研究や『解剖学』などの科学記録もある.彼の偉大さはすべて本書の中に圧縮される.