『ほんとうにどんなつらいことでも、それがただしいみちを進む中でのできごとなら、峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく。 宮沢賢治』
心理学者の河合隼雄氏は、賢治作品における猫の役割の重要性をずっと考えていたそうです。
山折哲雄氏が、『風の又三郎』『注文の多い料理店』『銀河鉄道の夜』の共通点として挙げた、「猫と風」というヒントから、風のつかまえどころの無さと優しさと荒々しさの同居、少しの隙間でも入り込んでくる点など猫との共通点を感じていると指摘しました。
賢治作品に登場する猫は、正にそのような性格を持って登場すると論じられています。
自身の信仰と農民とし生活しながら創作活動をした宮沢賢治の夢は何だったのでしょうか?
作品中に登場する架空の理想郷に、郷里の岩手県をモチーフとして「イーハトーヴ」と名付けたのは、彼の夢がそこにあったのかも知れませんね。
存命中は、作品が売れなかったようで、没後、協力者により花開き、今でもファンが多く存在する作家です。
「雨にも負けず…」も代表作ですが、「風」に魅力を感じていた彼は、忍耐を持って耐え忍ぶという一面もありながら、その実、自由や幸福を求めていたようにも感じられます。
「注文の多い料理店」の中では、店のシナリオに取り込まれた客の末路が、巧みに描かれています。
このフレーズの「ただしいみち」は、決して人生が平たんではないことを示唆しています。
また、「つらいこと」が人生にあるコトや峠には上りも下りもあるコトを包み隠さず述べています。
彼の悲願は「ほんとうの幸福」ですから、現実的にそれを忍耐を持って、歯を食いしばっていたのかも知れません。
人生に、明確なゴールである「幸福」という駅は、存在しないかも知れません。
でも、一日一日、そこに向かっているという実感こそ、「幸福」を心の中心に置くことに繋がり、それが、幸福に近づいている証しになるのでしょうね。
「ただしいみち」を探り当て、勇気も持って進むのも人生の課題です。
宮沢 賢治(みやざわ けんじ、正字: 宮澤 賢治、1896年(明治29年)8月27日 - 1933年(昭和8年)9月21日)は、日本の詩人、童話作家。
仏教(法華経)信仰と農民生活に根ざした創作を行った。作品中に登場する架空の理想郷に、郷里の岩手県をモチーフとしてイーハトーヴ(Ihatov、イーハトヴやイーハトーヴォ (Ihatovo) 等とも)と名付けたことで知られる。彼の作品は生前ほとんど一般には知られず無名に近く、没後、草野心平らの尽力により作品群が広く知られ、世評が急速に高まり国民的作家となっていき、今でも日本には広く愛好者が存在する。